アパレル業界で頻繁に使われる「デッドストック」。
意味や原因、企業への影響まで、デッドストックについて、わかりやすく解説します。

デッドストックとは何か?

デッドストック(Dead Stock)

デッドストックとは、在庫として保有しているにもかかわらず、一定期間にわたって売れずに倉庫に眠り続けている商品のことです。英語で直訳すると「死んだ在庫(Dead Stock)」。動きのない在庫=資金が回収できないまま眠っている状態を意味します。
目安として6ヶ月〜1年以上動きがない在庫をデッドストックと呼ぶことが多いですが、業界や企業によって基準は異なります。
倉庫の保管コストがかかり続け、その分の資金も動かせないため、アパレル企業にとって頭の痛い問題のひとつです。

デッドストックと「滞留在庫」の違い

この2つの言葉は混同されがちですが、実務では明確に区別されます。

用語状態対応の緊急度
滞留在庫販売ペースが遅いが、まだ一定の需要がある在庫。デッドストックになる手前の状態。早めの対処が重要
デッドストックほぼ需要がなくなり、販売の見込みがほとんどない状態の在庫。抜本的な対策が必要

滞留在庫の段階で適切に対処することが、デッドストックへの移行を防ぐカギです。
滞留在庫 → デッドストック」という流れを意識した在庫管理が実務では求められます。

なぜ発生する?デッドストックの主な原因

アパレル業界でデッドストックが生まれる背景には、業界固有の構造的な問題があります。

01:業界構造的な供給過多

日本のアパレル市場は、バブル期に約15兆円あった規模が、今や約10兆円まで縮小しています。
市場が約半分になったにもかかわらず、国内で流通する商品の点数はこの30年で約2倍近くに増加しています。
つまり、「買う人は減ったのに、売られる服は増えた」 という状態が30年以上続いているのです。
売れない服が生まれるのは当然の結果であり、これがデッドストックを生み続ける原因といえます。

出典:経済産業省「繊維産業の課題と経済産業省の取組」

02:需要予測の誤り(発注ミス)

トレンドの変化や天候、景気変動により需要の見込みが外れ、仕入れ数が実需を上回ってしまうケースです。
欠品を防ぐために必要在庫数より多く発注する傾向が多くの企業にあり、これが消化率を下げる一因にもなっています。

03:サイズやカラーの売れ残りが偏る

人気サイズが完売する一方、特定のサイズやカラーだけが大量に残るケースも多くみられます。
SKU(Stock Keeping Unit:商品管理単位)の数が多いほど、こうした偏りが生じやすくなります。

04:トレンドの急変とリードタイムの長さ

アパレル業界では、発注から納品まで数ヶ月かかることが一般的です。
企画・開発から販売までに半年〜1年近くを要するケースもあるため、製造中にトレンドが急変しても在庫のキャンセルが難しく、そのまま受け取るしかない状況が発生します。

デッドストックが企業に与える影響

環境省の令和4年度調査によると、アパレルの業界平均消化率は約70%、売れ残り率は約30%とされています。
売れ残りはブランド経営に多方面の影響を及ぼします。

出典:環境省「令和4年度循環型ファッションの推進方策に関する調査」(令和4年度)

影響の種類内容具体例
財務・資金繰り仕入原価が回収できないまま、資金だけが在庫に縛られ続けます。新商品の仕入れ予算が削られる
倉庫・物流コスト保管スペースを占有し続けるため、保管費や管理人件費が継続発生。倉庫費や管理人件費が増える
ブランドイメージ過剰値引きやアウトレット流通はブランド価値の希薄化を招く可能性があります。ブランド価値が下がり定価で売れにくくなる
環境・ESG売れ残りの廃棄は環境負荷に直結するため、在庫を出さない、無駄にしない取り組みが消費者からも求められています。消費者や投資家からの評価が下がる
新商品導入機会旧在庫が棚や予算を占有し、新商品の仕入れや展開を阻害。新商品を仕入れられない

デッドストックの対策と活用

デッドストックは以前、捨てるか安く売るかが主な対応でした。今は発生そのものを防ぐ、または別の形で活用するという考え方が広まっています。

① 発生を予防する

過去の販売データや季節やトレンドをもとに「どれくらい売れるか」を事前に読む精度を上げることが、デッドストックを生まない一番の近道です。近年はAIやPOSデータを使った需要予測を導入する企業も増えています。

② 早めに値引きして売る

売れ残りが出始めたら早めに値引きして在庫を動かすことが大切です。
シーズン終わりを待たずに値下げする、アウトレットやECで限定セールを打つなど、早く動くほど損失を小さくできます。

③ 別の形に転用・活用する

近年は、余った在庫の生地や素材を使って新しい商品を作る「アップサイクル」に取り組む企業も出てきています。
廃棄を減らしながらサステナビリティをアピールできる点で注目されています。

デッドストックに関わる職種

デッドストックに関する知識は、アパレル業界のさまざまな職種で役立ちます。

マーチャンダイザー(MD)

在庫計画と予算管理が主な仕事のひとつ。
デッドストックをどう減らすかが日常的な課題になります。最も深く関わる職種です。

バイヤー

何をどれだけ仕入れるかを決める仕事。
発注の精度がそのままデッドストックの量に直結します。

販売職(ショップスタッフ)

売場での提案や接客を通じて在庫を動かす役割を担います。
在庫の動きを肌で感じられる最前線のポジションです。

EC・デジタルマーケ

オンラインセールやプロモーションで在庫を消化する施策を担当します。
在庫状況を見ながら打ち手を考える場面が多い職種です。

物流・倉庫管理

在庫の保管や移動、廃棄までの流れを管理します。
デッドストックが増えると保管コストに直接影響するため、密接に関わります。

関連用語ミニ辞典

滞留在庫一定期間以上動きがない在庫のこと。デッドストックになる手前の状態で、早めに対処することが重要です。
マークダウン在庫を売るために商品の価格を下げること。タイミングが遅れるほど損失が大きくなるため、早めの判断が求められます。
消化率仕入れた商品のうち実際に売れた割合。(販売数 ÷ 仕入数 × 100)で計算します。業界では70〜80%以上が目安とされることが多いです。
在庫回転率一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す数字。高いほど在庫が効率よく売れていることを意味します。
アップサイクル売れ残った在庫の生地や素材を使って、新しい商品を作ること。廃棄を減らしながらサステナビリティをアピールできる取り組みとして注目されています。
SKU(Stock Keeping Unit)商品をサイズ・カラーなどの単位で管理するための最小単位。SKU数が多いほどサイズ・カラーの偏りリスクが高まる。

まとめ

この記事のポイント

✔︎ デッドストックとは、売れずに倉庫に眠り続けている在庫のこと。
✔︎ 主な原因は「供給過多構造」「需要予測の誤り」「リードタイムの長さ」「サイズ・カラーの偏り」の4つ
✔︎ 財務・物流・ブランドイメージ・環境など、会社のさまざまな部分に影響を与える。
✔︎ 対策は「発生を予防する」「早めに値引きして売る」「別の形に活用する」の3つが基本。
✔︎ MD・バイヤー・販売職・EC・物流など、多くの職種でデッドストックに関わる場面がある。

アパレル業界はトレンドの変化が速く、在庫をうまく管理できるかどうかが会社の業績を大きく左右します。
デッドストックについて知っておくことは、業界で働くうえでの基礎知識として役立つはずです。

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